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因州和紙を中心に和紙をご紹介。

和紙の原料

和紙の原料

(出典:手漉和紙大鑑 第一巻  毎日新聞社)

楮の品種と繊維

 楮(学名:Broussonetia kazinoki )は、桑科に属する多年生の落葉低木で、自然に生長させると6メートル以上にもなるが、栽培する場合は、毎年根元から刈り取るので普通は1.5〜1.8メートル程度にとどまる。

 楮の品種には・コウゾ ・カジノキ ・ツルコウゾ ・ヒメコウゾの四種が知られている。 そのうちコウゾはわが国特有のものであるが、カジノキは南方から渡ってきたものとされ、ヒメコウゾ、ツルコウゾは主として下級品に使用されている。

 またコウゾとカジノキは古くから同じものとされたり、また区別されたりして、今日でも両者の区別は容易でない。
一般に栽培されているものはコウゾといわれているが、この中にはコウゾとカジノキの両種が含まれていて、正しい区別は行われていない。

 楮の栽培地では、さらに品種が細かく分類されて数多くの名称が付けられているが、異名同種のものも少なくない。 従ってこれを一概にまとめることができないが、普通、栽培種は次の三種に大別することができる。

(イ) 麻葉(あさば): 葉のきれこみが特に深く、葉の形が似ているためにこの名称がある。 繊維は光沢に富み品質が優れている。

(ロ) 要楮(かなめ): 品質は麻葉にやや劣るが、栽培が容易で収穫が多い。繊維は太く強靱で紙はやや粗剛になる。

(ハ) 真楮(まかじ): 外皮に斑紋ができ、外皮の色によって黒まだら、青まだらとわけている。性質は強健で栽培が容易だが収穫は少ない。繊維は粗剛で荒く、特に耐久力のある強靱な紙の場合に用いられる。

 楮の繊維は各種の紙の原料の中でも最も強くて長い。
普通長さが5〜6mmで幅は0.015mmである。また繊維が絡み合う性質が強いので、紙が強靱で揉んでも丈夫であり、障子紙、版画用紙 その他の強さが求められる紙の原料として使われる。

 楮紙は和紙史のはじまりから存在し、現在も手漉和紙の大半をしめており、和紙を代表するものといえよう。
 なお、古くは楮紙は穀紙(こくし)とよんでいた。
 

楮の栽培

 楮は寒い地方でも良く育つが、一般には温暖な雨量の多い地方で、しかも風当たりの強くない南側の傾斜地が適している。
土質は排水の良い砂礫質で肥えた土地ほど生育はよいが、それほど土質は選ばない。

 楮の生産分布を見ると、西日本に多く栽培され、なかでも四国・中国・九州に集中している。 関東以北では茨城・群馬・福島に多く、中部・近畿地方には少ない。

 楮は植え付けた年から刈り取るが、第二年目までの収穫は少なく、第五年から第八年目のものが最も収穫が多く、以後、次第に減少していく。
 

楮の刈り取り

 刈り取りは秋の落葉した後か、翌春の芽の出る前が適当で、厳寒の期間は避けた方がよい。刈り取りは茎を一枝も残さず、全部刈り取った方が、翌年に粗剛のむらがなく、品質が均等になるのでよい。

楮蒸しと皮剥

 楮の生木は一メートル前後の長さに切りそろえ、小束にする。
平釜に水を入れ、その上に竹の簀を並べ、さきの小束を縦に立ててのせる。その周囲をさらに縄で強く縛って動かないようにして、「こしき」とよぶ大桶を逆さにかぶせ、火を焚いて蒸す。
この蒸し方を桶蒸し(おけむし)といい、別に箱蒸しという方法もある。

 楮を釜から取り出すと、ただちに周囲の靱皮部分を剥ぎ取る作業にかかる。
 まだ熱い楮原木に冷水を振りかける。するとこの冷水のために靱皮部が収縮して、中心の木質部から剥がれやすくなる。

 このようにして剥皮したものを楮黒皮、あるいは荒皮、生皮、ぼて皮、ぶいん皮などとよんでいる。これを竹竿などに掛けて充分に乾燥する。乾燥が不十分だと、貯蔵中に腐敗したり、変色して紙質を害する。

 なお、剥ぎ方によって先に述べた黒皮部が表面にあらわれる方法(黒剥ぎ、片剥ぎともいう)と内側の白い皮肉部が逆に表面にあらわれる方法とがある。
 後者は島根県の石州半紙の原料である石州産楮などの剥ぎ方で、白剥ぎ、引き剥ぎ、すっぽん剥ぎ、すぼむき、筒剥ぎなどとよばれている。

白皮の製造

 黒皮から薄い外皮を包丁で削り取って白皮にする作業を削皮作業といっている。
 削皮に取りかかる前に、黒皮を水に浸して充分に吸水させて、柔らかくしておく。
 黒皮から削り取った部分をかす皮、そそりかす、こかわ、へぐり皮、さる皮などといっており、この部分も捨て去られることなく、ちり紙などの原料に用いられる。

 かす皮を除去した白い皮は、清水中で洗い、数時間浸しておくと水に溶ける部分が流れ去り、上晒し、本晒しと称する白皮となる。

 白皮にする程度で二種に分かれ、緑色のあま皮部分を削り残すなぜ皮作業と、緑皮もきれいに取り去って靱皮繊維部分のみの真白い白皮にする本引きの白皮作業がある。

 前者は、繊維のからみ合いのすきまをあま皮がうずめるので、やや黒っぽい紙色ながら光沢のある強靱な「石州半紙」や「泉貨紙」などの原料に適当な方法であり、後者は、紙色が白く地合がさえて美しい「越前奉書」、「本美濃紙」、「典具帖紙」などの原料として適当な方法である。

雁皮

雁皮の品種と繊維

雁皮

 雁皮(学名:Wikstroemia sikokiana)は、ジンチョウゲ科に属する多年生の落葉低木で、樹皮は平滑で黒褐色、高さは3メートル以上に成長する。
 その生皮を剥ぎ取る時に、特有の香を発するので、他の木との識別ができる。

 現在では全国的に「がんぴ」で通用しているが、紀州では「かみそ」、近江では「かみのき」、但馬地方では「がび」、讃岐では「やまかご」「しばなわのき」「ひよ」などともよばれている。

 雁皮の繊維は細くて強く、長さは2.5〜5.3mm、幅は0.01〜0.03mmあり、湿潤な状態に置かれても、たいへん強靱である。
 また固有の光沢があり、半透明で粘着性に富んでいるので、これを用いて漉いた紙は緊締して「馴れ(なれ)」のよい紙(紙ができあがって、時日を経過するにつれ、質が良くなる紙)ができる。

 雁皮紙は和紙史のはじまりから楮紙とともに中心的な紙として存在してきた。
 古くは斐紙(ひし)とよばれ、現在、鳥の子、箔打紙、飛雲、打雲、水玉などの漉模様の装飾紙、謄写版用紙、および記録などの永久保存用の高級和紙の原料として使われている。

雁皮の生育場所

 雁皮は台湾やフィリピンの諸島などに野生しており、わが国では三重、和歌山、兵庫、高知などを主産地として、静岡から西の近畿、中国、四国、九州、沖縄の諸地方の温暖な地方に自生している。

 雁皮は、楮、三椏とは異なり、人工栽培法が不適当であって、もっぱら山野に自生するものを採取している。
 明治時代の記録に栽培したとあるが、それによると、成長が遅く、苗を植え付けてから約三年から五年を経て初めて収穫できるという。
 雁皮は天然に任せて自然に散落した種子から発芽繁殖させた方が適当と思われる。

 雁皮の生育している場所は、土壌が水分を多量に保有しないで、雨水などが速やかに流されるか、蒸発する土地が適当である。
 多くは花崗岩、花崗斑岩、石英斑岩などの分解した土壌に自生している。

雁皮の刈り取りと皮剥

 雁皮は、樹齢の五年くらいのものが、繊維の光沢、硬さ、原料になる歩留まりなどからみて最も適当である。

 刈り取りの時期は、春の発芽の直前(三月中旬〜四月下旬まで)がよい。伐採した雁皮原木は、ただちに皮を生のまま剥ぎ取ることが必要で、時間を経過すると剥皮が困難になる。

雁皮の黒皮と白皮

 雁皮原木から皮を生剥ぎにして、そのまま日陰で干し竿に掛けて風で乾かしたものを黒皮といっている。このとき直射日光で乾燥すると、皮が乾くにしたがい自然と巻き込んでいって内側に水分が残り、これが後で皮の内側に黒い斑点となる。

 生剥ぎした皮を、ただちに包丁で表皮の黒皮部分を削り取り、半白皮として日陰で風で乾燥させたものを雁皮の白皮といっている。

 雁皮紙の原料としては、一般に黒皮のほうが多く使用されているが、それは黒皮から製造した紙が最も雁皮特有の光沢をもつものとなるからである。
 白皮にして貯蔵しておくと次第に雁皮としての光沢を失っていく。したがって雁皮は一般に黒皮で出荷されている。

三椏

三椏の品種と繊維

三椏

 三椏(学名:Edgeworthia papyrifera)は、雁皮と同様にジンチョウゲ科に属する落葉低木で、高さは1.5〜2メートルに達し、枝は灰褐色をしており、その枝は必ず三本づつ三叉状に分かれているのが特徴である。

 三椏の繊維は細長く、平均の長さは2.9〜4.5mm、幅は0.014〜0.031mmで、光沢がある。

 三椏を製紙原料としているのはわが国だけであるが、使用し始めたのは近世になってからで、慶長三年(1598年)に徳川幕府から伊豆修善寺村民にあてた文書に出てくるのが古い例である。

 しかし、三椏繊維の真価が理解され、栽培が盛んになったのは明治以後で、大蔵省印刷局で本格的に使用されてからのことである。
現在、機械漉和紙の原料としても大量に使用されている。

 和紙ははじめ楮紙(穀紙)、雁皮紙(斐紙)と麻紙が代表的なものであったが、その後三椏が登場して麻紙に代わり、現在の代表的な三紙の一つとなった。

三椏の栽培と刈り取り

 三椏は楮ほどではないが、比較的寒さに強いので、気温の低い、積雪の多い地方でも栽培されるが、温暖で雨量の多い地方が最も適しており、四国、中国地方が主産地である。

 三椏は四月から五月頃種を蒔いて、三年から五年ものを伐採する。楮のように各株の全部の茎を毎年刈り取るようなことはしないで、株の中で比較的長く大きなものを選んで刈り取り、短いものは後年適度に成長してから刈り取る。

 三椏株の寿命は、環境、栽培方法によって差異はあるが、植え付け後ほぼ二十年くらいまでは刈り取れる。
 刈り取りの季節は十一月下旬から三月までの、落葉してから新芽の出る間に行われる。

三椏の皮剥と白皮の製造

 楮と同様に蒸してから皮を剥くが、三椏の茎は枝が三叉に分岐しているから、靱皮部を剥ぐのに力を要する。

楮、雁皮、三椏という代表的な和紙原料の生木から、黒皮、白皮、紙の各段階の収穫の割合は、土地、気候、樹齢などの条件で一定はしていないが、その平均的な歩留まりを表にすると、次のようになる。

  原料の段階  雁皮三椏
生木(含水枝条)100010001000
生皮(含水皮) 330    
黒皮(乾燥皮) 170170160
白皮(乾燥皮)  90 80 75
紙量       54 44 35

その他の和紙原料

 和紙の原料として、その他に用いられるものは、苧麻(ちょま)、桑皮、マニラ麻、各種の木材パルプ、木綿、化学繊維、故紙、わら(麦わら・稻ワラ)、竹、大麻、藺(い)、七島藺など多種多様であるが、その多くは単独では用いられず、楮や三椏などと混合して補助原料として用いられる。

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